斜視の治療strabismus treatment
斜視の治療には保存的治療と手術治療のふたつがあります。
保存的治療
- 眼鏡の治療
斜視の角度が小さい場合は、プリズム眼鏡といって見た目は普通の眼鏡で、中に斜視を治すプリズムを組み込むことができます。
角度が大きい場合は、フレネル膜プリズムという膜を眼鏡に貼ります。こちらは見た目に線が入りますので、見た目に分かります。
他にも物がだぶって見えて困る場合には、オクルージョン膜という少し曇った膜を貼ることもあります。
患者様に合わせて調整します。 - ボツリヌス治療
ボツリヌスA型毒素は筋肉を麻痺させる作用があります。
例えば、内斜視の人の内直筋にボツリヌスA型毒素を注射すると、内直筋の作用が弱くなり内斜視を治すことができます(図2)。ただ、作用は約3か月で切れます。
急性内斜視では、約半数の人がボツリヌス治療で手術が回避できたという報告もあり、急性内斜視に限ってはボツリヌス治療が推奨されています。ただし、発症後半年以内の人が適応です。
(三村 治, 木村 亜紀子,他.斜視に対するA型ボツリヌス毒素注射の治療効果.日眼会誌,2020)図2
手術治療
目の周りには6本の筋肉(外眼筋と言います)があります(図3)。
斜視の手術は目の周りの外眼筋を動かして、筋力を弱めたり、強めたりして、外眼筋のバランスをとることで斜視を治すものです。どの外眼筋をどう動かしてバランスをとるか、ということが最も大切になります。そのため、検査は1回のみではなく最低でも2回は行います。その方に合った最もよい手術方法を決めるために必要です。
図3 外眼筋
― 当院では難治性斜視(回旋斜視、上下斜視、複視のある水平斜視)の手術も行います。
この場合、手術当日は予定手術を行い、翌日、複視が消失したかを確認しながら最終的に外眼筋を縫い付ける調節糸法という手術方法を用います。
医師が難治性斜視と判断した場合はこの調節糸法を用います(翌日の調節のための手術に関しては料金は発生しません)。
手術の副作用(合併症)
- 斜視の手術のあと、術後すぐは目の位置に問題がなくても、長期的に目の位置がずれることがあります。程度が強い場合は再手術が必要になることもあります。
- 医学的に目の位置が良くても(検査結果は良好)、ご本人が見た目に満足できない場合は再手術を行うことがあります。
- もともと正面視で複視のある人は、術後、正面視ではひとつに見えるようになっても、側方視で複視が残ったり、新たに正面視以外で複視が出現することがあります。術後の眼球運動トレーニングで消えることもありますが、最終的に残ることもあります。手術の目的が正面視での複視消失だからです。
斜視の手術点数
- 1.前転法4,280点
- 2.後転法4,200点
- 3.前転法及び後転法の併施10,970点
- 4.斜筋手術9970点
- 5.直筋の前後転法及び斜筋手術の併施12300点
- 6.調節糸法12060点